ある調査では、80歳以上の高齢者の約2割が低栄養という結果もでています。
高齢者の方に、食べない理由を聞いてみました。
- 柔らかすぎる
- 小さく刻んでいる
- 飲み込みにくい
- 何の食べ物か分からない
野菜が柔らかすぎるとグニャっとして「気持が悪い」と言われます。
わたしが働いている施設では、持病がある方や認知症の方を除くと食べない方はほぼゼロです。
実際に取り入れている食べてもらう調理法の工夫、気を付けている事をまとめています。
高齢者の方が食べてくれないと、悩んでいる方のお役にたてるとうれしいです。
高齢者の食事を食べない原因は間違った調理法
高齢者は、硬いと食べないと思いがちで柔らかくしずぎたり、小さく刻み過ぎて食べないという事があります。
入居者さまに食べてもらえるように、実践している調理法です。
高齢者が食べる調理法
・違和感のない食感
・噛みやすい大きさ
・肉類を柔らかくする
・認識できる調理法
・飲み込みやすい料理
・煮汁など適度な水分がある
噛む力や飲み込む力が段々と衰えていくのは確かです。
食べない状況は体力が落ちる原因になります。
高齢者の食事を食べない理由を経験から解説
高齢者が食事を食べない理由を具体的に説明します。
高齢者が食べない理由
・小さすぎて食べない
・食感に違和感がある
・何の食べ物か分からない
・肉類が噛めず飲み込みにくい
食べにくい原因①小さい
ピーマンを例にしてみます。
切り方が少し違うだけで違いが出ます。
例えば、酢豚を作る場合
酢豚の場合 | 箸でつかみやすさ・噛みやすさ |
① | 小さすぎる |
② | ちょうどいい |
食材によっては、小さすぎると食べにくくて残してしまいます。
食べにくい原因②柔らかすぎる
本来歯ごたえを楽しむ食材が、噛んだ瞬間〝グニャっと“柔らかすぎると「気持が悪い」と感じます。
食材によっては違和感に感じて食べないという事になります。
食べにくい原因③何かが分からない
噛んだ時や見た目が、何の食材か何の料理かが認識できないと食べない原因になります。
加齢とともに、認知機能の低下や口の中の機能(歯の欠損、唾液の分泌量減少)の低下で、高齢になるとより感覚が鈍感になります。
違和感のない調理法や見た目の工夫が必要になります。
高齢者の食事を食べないを改善する栄養士直伝の調理方法
実際に施設で取り入れている調理方法です。
- 切り方(きゅうり)
- 煮かた(素材により変える)
- お肉を柔らかくする工夫
- 盛り付ける時のお肉の切り方
切り方例①胡瓜の場合
食べやすく、美味しく感じる切り方にする事で、食べないを減らすことができます。
①ちょうど良い
お箸でつかみやすく、歯ごたえも残る
②分厚すぎる
歯や歯茎の状態により、噛む力が弱いと噛めない。
誤ってノドに詰める危険があります
③薄すぎる
お箸でつかみにくい
食感が残らず、胡瓜の味がしない
※献立によっては、これに限りません
煮かた例②根菜の煮物
素材により、煮込み方で美味しい柔らかさなどの工夫。
大根は、しっかり味が入り柔らかくジューシーな方がおいしいと認識があります。
レンコンはある程度食感が残る方がおいしいと感じます。
また煮物は、煮汁が多い方が食べやすいです。
肉調理③柔らかくする
お肉料理の注意点
- 繊維が嚙み切りにくい
- 飲み込みにくい
- 刻むと何のお肉か分からない
調味料や果物の酵素の働きを利用して、お肉を柔らかくする方法をお伝えします。
塩麹使用
※塩麴はタンパク質を柔らかする酵素を含む
①鶏肉をフォークでさす
(しみ込みやすくする)
②塩麹につける
③オーブン等で焼く
ふっくら仕上がります
マヨネーズ使用
※マヨネーズに含まれる成分が柔らかくします
①漬けるか絡める
②焼く
お肉表面をコーティングしてパサつき防止にも効果的
すりおろした野菜や果物につける
玉葱、キウイ、パイナップルなど
※タンパク質分解酵素を含む
切り方例④出来上がった料理の切り方
鶏肉や厚みのある豚肉は、盛り付ける際の切り方に工夫が必要です。
噛む力が衰える
→幅が広いと噛み切れない
→幅を1~1.5cmで細く切る
チキンステーキやトンテキなど繊維のあるお肉は、幅を1cmから1.5cm幅で切ると食べやすくなります。
一般的にお肉は、そぎ切りすることで柔らかくなりますが、高齢になると幅が広いよりも狭い方がかみ切りやすくなります。
お肉自体に厚みがあるので、細くカットしても何のお肉か分からないということはありません。
高齢者の食事の注意点
高齢者のお食事で注意する点もお伝えします。
刻み食について
病院や施設では、高齢者の咀嚼を助ける目的で「刻み食」を取り入れます。
刻み食は時として事故を引き起こすこともあります。
刻むデメリット
・口に入れた時にバラバラ
→誤嚥する、むせ込む原因
・形が無くなる
→何を食べているか分からない
職場でも、介護スタッフからの要望で「刻み食にしてほしい」と言われることも多いです。
理由は、噛む力が弱った方が、噛まなくていいから。
刻むよりも、出来るだけご自身で噛むことをおすすめします。
刻むことで柔らかくなったと思いがちです。
写真のように、胡瓜などは小さく刻んでも胡瓜の硬さは残ります。
口に入れた時の違和感とツブツブが口に残り、美味しく感じません。
高齢者が食べやすいように刻むことで、返って食べない原因になることもあります。
トロミ剤について
高齢者施設や在宅介護でも使用する「トロミ剤」。
トロミ剤を使う理由
・口の中でまとまりやすくする
・喉を通るスピードを遅らせる
誤嚥を防ぐために食物が口の中でまとまりやすい様に使用します。
お茶など水分は嚥下機能(飲み込む機能)が低下した方には、喉を通るスピードを遅らせるためにトロミ剤を使います。
しかし、トロミが付いた食事や飲み物を嫌う方がほとんどです。
誤嚥性肺炎を防ぐ目的で必要なのですが、食べない、飲まないでは本末転倒です。
使い方付や付ける粘度は工夫が必要かもしれません。
高齢者の食事を食べない問題のコツは見た目と大きさ
高齢者のお食事を担当するようになり気づかされることが多い毎日です。
- 柔らかすぎたり、小さすぎると食べない
- 何の食べ物か分からないと食べない
- 噛みにくい、飲み込みにくいと食べない
- お箸でつかみにくいと食べない
食事介助に入る際は「カボチャの煮物ですよ」「魚の塩焼きですよ」とお声掛けするのとしないのとでは、食べてくださる反応が違います。
それほど、認識しながら食べる事の重要性が分かります。
食事は、日常生活に幸福感と満足感を与え生活の質を高めます。
その方その方に合った、食べる調理法を見つけていってみて下さいね。
最近では、高齢者向けの柔らかいお食事の宅配サービスなどもあります。
上手に取り入れて、介護する方の精神的負担を軽減することも大切な介護の一つです。
≫≫こちらをご参考ください
やわらかい宅配食の『やわらかダイニング』
レシピが参考になります
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